巨額のFXオプション取引は相場に影響を及ぼす

2014年10月30日 19:14
さて、こうしたFXのオプション取引が為替レートに及ぼす影響について考えてみよう。
 
実際のところ、前述したようなバニラ・オプションの場合、為替レートに及ぼす影響は、ほとんど考える必要がない。普通にコールやプットを売買するのに伴って為替レートを何か作為的に動かそうといったインセンティブが働くことはあまりないからである。
 
ただし、単なるバニラ・オプションでも、トレードの額が巨額になると、やはりマーケットに影響を及ばすケースがある。
 
たとえば1ドル=82円でドルを売れる権利を1億ドル分、もっているとしよう。プットの買いなので、すでにプレミアムも支払っている。
 
1ドル=82円のプットオプションをもっているということは、将来、1ドル=82円のドル売りポジションをつくれるということだ。そして、いまの為替レートが1ドル=81円だとしたら、そこで1億ドル分のドルを買う。
 
この状態で、たとえばドルが1ドル=80円まで下落したとする。当然、1ドル=81円のドル買いポジションには損失が生じるが、一方、1ドル=82円で売れるオプションももっているわけだから、1ドル=82円で1億ドル分のドル売りポジションをつくることができる。実質的には、1ドル=81円で1億ドルの買い、1ドル=82円で1億ドルの売りというポジションをつくることができるため、1円幅の利益を確保することができる。
 
あるいは、1ドル=81円で1億ドルを買ったところ、1ドル=82円70銭までドル高が進んだとする。
 
このような場合は、ひとまずFXのオプションを見合いにつくつた1ドル=81円のドル買いポジションを82円70銭で売り、利益を確定させればよい。そうなると、今度は1ドル=82円でドルを売る権利だけが残ることになるが、これについては、再び1ドル=82円を割り込む場面が生じてきたところで、もう一度、1億ドル分を買う。何をして
いるかといえば、結局、FXのオプションの価格をはさんで、上を売って下を買っているわけだ。
 
その結果、1ドル=82円というオプションのストライクをはさんだ上下のところで、巨額の売りと買いが錯綜することになる。結果、為替レートは徐々に、1ドル=82円になっていく。つまり、巨額の資金でFXのオプション取引が行なわれていると、徐々にストライクに向かって、相場が収まる可能性が高まる。つまり、動きが小さくなっていくといった影響を及ばすことがあるのである。